はじめに
レオーネ監督『夕陽のガンマン』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、演出
黒澤明の影響
レオーネは黒澤明監督の影響が顕著です。そもそも『荒野の用心棒』も黒澤監督『用心棒』のモロパクリ映画でした。
黒澤明の作品の基調はトルストイ(『戦争と平和』)、ドストエフスキー(『罪と罰』)といった、ロシア文学のリアリズムで、代表作『七人の侍』など、グロテスクなまでのリアリズムで民衆の姿を活写し、そこにはトルストイやドストエフスキーの最良の部分が現れていました。レオーネにもそうしたエッセンスが継承されます。
しかし、黒澤明の演出力は五〇年代がピークで、以後は右肩下がりな傾向があります。黒澤明は助監督、脚本家としての最初期のキャリアの仕事もピカイチで、とにかく映画作りの基礎技能が地味に高いのですけれども、国際的な名声が高まるにつれて、演出は大仰で、キレの悪さも目立つようになっていってしまいます。レオーネもキャリアの後期は大仰な芸術イキリが目立ちます。
こんな感じでいいところも悪いところも黒澤譲りです。
ノワール、ハードボイルド
本作に影響した黒澤明監督『用心棒』はハメット『血の収穫』というハードボイルド文学の影響が知られています。これはシチュエーションが共通しており、主人公がさまざまな勢力の思惑が渦巻く土地で戦略を巡らせて立ち回る、という中心的なデザインを引き継いでいます。
ヘンリー=ジェイムズ(『鳩の翼』『黄金の盃』)の影響で独特のニヒルなリアリズムを展開したハメットでしたが、本作の虚無的なムードにもその影響が見えます。また、複数のエージェントが戦略的なコミュニケーションを巡らせる本気のデザインもハメット作品の影響が見えます。
物語世界
あらすじ
賞金稼ぎのダグラス=モーティマー大佐は賞金首を仕留めるものの、保安官事務所で10,000ドルの賞金が賭けられたインディオ一味が近くにいると知ります。
賞金稼ぎのモンコもインディオ一味を狙っており、モーティマーはモンコと一味の賞金を山分けすることにします。一味は、悪党グロッギーとエルパソ銀行を狙っていました。
モーティマーはインディオの情報を得るため、モンコを一味に潜入させようとします。モンコは刑務所から一味の仲間を脱獄させた恩を売って一味に加わります。
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