北野武監督『3-4X10月』解説あらすじ

北野武

始めに

北野武監督『3-4X10月』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、演出

日活ロマンポルノ(神代、若松)流モダニズム、松竹ヌーヴェルバーグ、東映

 北野武監督は俳優としてのキャリアが先ですが(大島渚監督『戦場のメリークリスマス』など)、大島渚などの松竹ヌーヴェルバーグやその先駆となったヌーヴェルバーグからの影響が顕著です。北野監督はカマトトぶる傾向がありつつ結構映画を観て消化してはいるのですが、とはいえタランティーノ(『パルプ=フィクション』)、スピルバーグ(『ジョーズ』)、黒沢清(『CURE』)などと比べると映画史の全体性や体系性への理解は欠いています。『座頭市』にはそれが良く現れます。

 とは言え演出力は『ソナチネ』など初期監督作から圧倒的で、神代辰巳監督などの日活ロマンポルノの最良の部分を受け継いでいる印象です。東映の工藤栄一監督を連想させる、ブレッソンやメルヴィルに習ったミニマリズムが特徴です。

 また深作欣二に代表される東映の実録やくざ映画の影響が顕著で、虚無的なリアリズムが展開されていきます。

 多分オールタイムベストみたいな作品をちょこちょこつまみ食いしてそこから演出をデザインするセンス、要領が抜きん出て上手いです。

スタイルを確立した『あの夏、いちばん静かな海。』

 キャリアの中での印象として『その男、凶暴につき』や本作はまだ習作段階でそう面白い内容ではありませんでしたが、その後の『あの夏、いちばん静かな海。』と『ソナチネ』でスタイルを確立します。ブレッソン、メルヴィル的なミニマリズムを基調とする画作りを完成します。

 ジャンルとしては北野監督はもっぱらジュヴナイル、青春ものとヤクザ映画を初期から得意としたのでした。

シュルレアリスムの影響。ジュヴナイル。青春残酷物語

 北野武監督作品はヌーヴェルバーグのゴダール、トリュフォーなどのアート映画からの影響が顕著です。また、そうしたアート映画に影響したシュルレアリスムからの影響も顕著です。

 本作もシュルレアリスムの影響が顕著で、ナンセンスとバイオレンスが織りなす内容になっています。また物語のすべては視点人物の雅樹の妄想でしかないというデザインになっています。

物語世界

あらすじ

 草野球チームに所属しているガソリンスタンド店員の雅樹は、大友組のチンピラと職場で衝突します。

 チームの監督で元大友組幹部の井口が事態の収拾に動くものの、井口は刺され重傷を負い、やがてチームと大友組との抗争に発展します。

 雅樹はチームメイトと沖縄へ拳銃を入手するため旅立ちます。沖縄で雅樹と和男はヤクザの上原と玉城と出会います。上原達は組の金を使い込み、組員から敵視されており、上原も組に反感を抱いていました。翌日、雅樹と和男は上原達と共に駐屯していたアメリカ兵から銃を購入します。上原は銃の半分を雅樹達に残し、去っていきます。

 そして上原達は組の事務所に乗り込み、組員全員一人残らず射殺します。一方、雅樹達は空港で銃を隠しながら帰りの便を待っていました。そこへ玉城が現れ、礼として大量の金が入ったカバンを渡してくれます。しかしそこへ生き残った組員に捕まり、上原と玉城は殺されます。

 空港を逃れ、東京に戻った雅樹達はそ大友組の事務所へ殴り込むものの、返り討ちに遭います。その夜、雅樹はサヤカとガソリンスタンドのタンクローリーを奪い、事務所へ突っ込ませます。

 というのは雅樹の妄想だったのでした。

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