始めに
王家衛監督『恋する惑星』解説あらすじを書いていきます。
演出、背景知識
ヌーヴェルヴァーグ(ゴダール)、フレンチノワール、鈴木清順
青や緑を基調とする独特な色彩感覚の画作りが展開され、スタイルの面ではゴダール、メルヴィルなどのフレンチノワール、鈴木清順のアングラ映画の影響が見えます。
ゴダール監督『勝手にしやがれ』
本作品はヒロインのベリーショートの髪型やファッションだったり、性格設定だったり、ノワールのパロディとしてのメロドラマだったり、全体的にゴダール監督『勝手にしやがれ』の影響が顕著に見えます。
まずゴダールはブレヒトという劇作家の影響が顕著なのですが、ブレヒトに『都会のジャングルにて』などアメリカを舞台とする作品があります。これは第一次対戦後ドイツに借款などでアメリカ資本が流入し、社会や都市に「アメリカ」文化が浸透、侵食してきた結果によるものでした。同様に『勝手にしやがれ』は第二次対戦後のフランスで、アメリカのギャング俳優に憧れる青年を中心として、ネーションの伝統とアイデンティティが薄れ、伝統と公共性なき「アメリカ」の影が社会を覆う様を描く、ポップアート作品になっています。こうしたコンセプトは村上龍『限りなく透明に近いブルー』や本作に継承され、青春群像劇によってネーションのアイデンティティの揺らぎを描いています。
『勝手にしやがれ』の影
本作はゴダール監督『勝手にしやがれ』のフランス/アメリカ文化の相剋の図式を中国への返還(97)の差し迫る香港に舞台を移し、中国とイギリスの間で揺れる不安定な香港のネーションのアイデンティティ、国内のさまざまなすれ違いや緊張、未来や行く先への不安を二組のカップルのすれ違いを通して描いているのです。賞味期限のある缶詰など、未来に対するさまざまな不穏な暗示が示されているのもそうした意味が込められていると考えられます。
とはいえ本作は即興による演出と脚本も多きいので、即興演出によってシュルレアリスムが試みたようなモチーフの偶発的なモンタージュが重ねられる中でそのような解釈に開かれているという部分も大きいです。
物語世界
あらすじ
香港の警察官であるモウの恋人メイは4月1日に彼と別れます。関係を終わらせる彼女の真剣さを確かめるため、モウは1ヶ月待つことにします。モウは毎日、賞味期限が5月1日のパイナップルの缶詰を買っていたます。メイはパイナップルが好きで、5月1日は彼の誕生日だったからです。一方、金髪のかつらをかぶった女性は、密輸作戦が失敗に終わった後、麻薬の裏社会にいます。
5月1日、モウはクラブで金髪のかつらをかぶった女性に近づきます。しかし、彼女は疲れ果て、ホテルの部屋で眠り込んでしまい、モウは古い映画を見たり食べ物を注文したりします。モウは彼女の靴を磨いてからベッドで眠っている彼女を残して去ります。彼女は朝に出て行き、彼女を陥れた麻薬王を射殺します。モウはジョギングに出かけ、ポケベルで彼女から誕生日おめでとうというメッセージを受け取ります。彼は重慶マンションのいつもの食料品店を訪れ、そこで新しいスタッフのフェイとぶつかります。
もう一人の警察官、警官 663 もまた、客室乗務員との別れに悩んでいます。フェイは密かに彼に恋をしています。ある日、客室乗務員が店を訪れ、男性を待ちます。彼女は彼が休みの日だと知り、ビュッフェのオーナーに警察官のアパートの鍵一式が入った手紙を残します。
フェイは警官 663に手紙のことを告げるが、警官 663はそれを読むのを遅らせ、ビュッフェに保管するように頼みます。フェイは鍵を使って何度も警官 663のアパートに入り、掃除や模様替えをします。警官 663は自分のアパートにフェイが来るのを見つけ、彼女が自分に好意を持っていることに気づき、カリフォルニアというレストランでデートの約束をします。フェイは現れず、ビュッフェのオーナーで彼女のいとこがレストランに行き、フェイが米国カリフォルニア州へ出発したことを告げます。彼女は1年後の日付が書かれた紙ナプキンに書かれた 搭乗券を警官 663に残します。
客室乗務員となったフェイは香港に戻る。フェイがファストフード店に顔を見せると、店は改装中で、そこにいたのは、あの店主ではなく663号でした。店主は店舗を増やし、警官を辞めた663号がその店を譲り受けていました。663号はフェイにあの時の手紙を広げて見せます。
「“こんな搭乗券”で乗れるか?行き先が読めない」といいます。フェイは「新しい搭乗券をあげる」と紙ナフキンに書き始めます。
フェイは行き先はどこがいいか聞きます。663号は「君の行きたいところ」と答えます。
参考文献
・『中国映画の文化人類学』



コメント