始めに
北野武監督『アウトレイジ』について解説レビューを書いていきます。
背景知識、演出
日活ロマンポルノ(神代、若松)流モダニズム、松竹ヌーヴェルバーグ、東映
北野武監督は俳優としてのキャリアが先ですが(大島渚監督『戦場のメリークリスマス』など)、大島渚などの松竹ヌーヴェルバーグやその先駆となったヌーヴェルバーグからの影響が顕著です。北野監督はカマトトぶる傾向がありつつ結構映画を観て消化してはいるのですが、とはいえタランティーノ、スピルバーグ、黒沢清などと比べると映画史の全体性や体系性への理解は欠いています。『座頭市』(2003)にそれが顕著です。
とは言え演出力は『ソナチネ』など初期監督作から圧倒的で、神代辰巳監督などの日活ロマンポルノの最良の部分を受け継いでいる印象です。東映の工藤栄一監督を連想させる、ブレッソンやメルヴィルに習ったミニマリズムが特徴です。
北野武版『必殺』である『アウトレイジ』シリーズ
『アウトレイジ』シリーズ(1.2.3)は北野武版『必殺』といった内容です。
プログラムピクチャーの活劇に進出する契機は『座頭市』(2003)ですが、あれからして殺陣はキレキレなのですが、いいところも悪いところも勝新太郎監督『座頭市』(89)に似ていて、作家主義が滑っています。そもそも『座頭市』シリーズが名作なのは初期だけで次第に若山富三郎版『子連れ狼』と大差ないゲテモノ映画になっていく印象ですが、とは言え北野版『座頭市』もまあまあ珍作ではあって、タランティーノ(『パルプ=フィクション』)やゴダール(『ゴダールのリア王』)ほど引き出しが多くはないことを再確認させられました。
ただあの作品が北野にとってプラスになったのは実感するので全然悪い作品とは思いません。プログラムピクチャーに舵をとったのは正解で、トリュフォーが反俗的なコンセプトを維持しつつモダニズム的な形式主義的実験から、新古典主義的なフォルマリズムへと移り、クラシックなスタイルのメロドラマを展開していったのと重なりますが、スタイリストとしての武の美点が生きる路線へ進んだのは良かったです、
『アウトレイジ』シリーズはそれこそ工藤栄一監督の『必殺3』のように、シャープで洗練された演出で魅せてくれます。印象的な殺陣が緊張をつないでくれるので最後まで飽きさせません。
マカロニウェスタン、実録ヤクザ映画
『必殺』シリーズからしてそうですが、本作もマカロニウェスタンからの影響が顕著です。虚無的で没理想的なヤクザの世界が描かれます。またこのあたりは深作欣二監督『仁義なき戦い』シリーズ以降の実録ヤクザ映画の影響も顕著です。
マカロニウェスタンの代表的なレオーネ監督のドル箱三部作(1.2.3)は、黒澤監督『用心棒』の影響が大きいですが、黒澤監督『用心棒』はハメット『血の収穫』というハードボイルド文学の影響が知られています。これはシチュエーションが共通しており、主人公がさまざまな勢力の思惑が渦巻く土地で戦略を巡らせて立ち回る、という中心的なデザインを引き継いでいます。ヘンリー=ジェイムズ(『鳩の翼』『黄金の盃』)の影響で独特のニヒルなリアリズムを展開したハメットでしたが、『用心棒』の虚無的なムードにもその影響が見えます。
ヘンリー=ジェイムズやハメット的な心理劇はレオーネ監督のドル箱三部作(1.2.3)に継承され、さらにそこからアウトレイジへと継承されたと言えます。本作もハメット『血の収穫』さながらに、さまざまな組織と人物の戦略的コミュニケーションの応酬が展開されます。
フィクション世界
あらすじ
関東一円の極道界を支配する山王会会長・関内(北村総一朗)は、傘下の池元組が麻薬を扱う村瀬組と兄弟杯を交わしていることを快く思っていませんでした。関内は、自身の右腕である本家若頭・加藤稔(三浦友和)とともに、この2つの組を仲違いさせようと企て、組長の池元(國村隼)に対して村瀬を締めろと命じます。
兄弟分の村瀬(石橋蓮司)相手に事を荒立てたくない池元は、配下の大友組組長・大友(ビートたけし)に対して、村瀬組を締めることを命令します。村瀬組若頭・木村(中野英雄)の思いがけない抵抗、池元の二枚舌、山王会内部の思惑などに翻弄されながらも、大友は歯科医院に赴き、歯の治療を受けていた村瀬を襲撃し、村瀬組を締めることに成功。最終的に村瀬組は解散します。
大友は村瀬のシマを継承し、金庫番の石原が管理する大使館の闇カジノで成功を収めます。一方、村瀬の麻薬密売が発覚し、池元に唆された大友は村瀬を殺害します。ところが、これを口実に関内は池元に大友を破門するように仕向け、池元は大友を破門します。大友はエンコをして、関内の元へ向かいます。関内は、破門は池元の独断だと言い、池元の殺害を唆します。そこで大友は闇カジノを訪れていた池元を殺害します。闇カジノを狙っていた関内は、今度は池元組若頭の小沢に、組を継ぐために親の仇を討てといい、大友組と池元組の抗争を仕掛けます。小沢は、次々と大友組の組員を殺害していきます。大友はマル暴・片岡の説得で逮捕され、刑務所に入ります。
抗争は終結し、小沢は関内の元に挨拶に伺うものの、加藤に射殺されます。加藤は関内をも射殺し、小沢が関内を殺した様に装います。一方、大友は先に服役していた木村に刺されます。
山王会は加藤が継承し、石原は加藤の側近となります。その2人の前に片岡が現れ、山本を紹介するとともに、大友は木村に殺害されたと報告します。
参考文献
・”Revolution of the MInd:The Life of Andre Breton”
コリン・マッケイブ著 掘潤之訳『ゴダール伝』(みすず書房,2007)
岩淵達治『ブレヒト』(清水書院.2015)



コメント