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木下恵介監督『楢山節考』解説あらすじ

1950年代解説
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始めに

 木下恵介監督『楢山節考』解説あらすじを書いていきます。

演出、背景知識

松竹蒲田の巨匠、リアリズム

 木下恵介は小津安二郎(『東京物語』)、成瀬巳喜男(『浮雲』)などとならんで、松竹蒲田調を代表する監督として知られています。木下は成瀬と小津であればやや小津の方に近く、詩的リアリズムのモードやウィリアム=ワイラーなどのメロドラマのスタイルを継承し、フォルマリスティックに洗練された語り口でドラマを展開します。

 生涯それほど向いてもいないファミリーメロドラマにこだわり続けた小津とは対象的に、豊かな語り口でもってさまざまなバラエティのメロドラマを展開したのが木下恵介で、溝口健二(『雨月物語』)やウィリアム=ワイラーにも似たオールラウンダーでした。

南部ゴシック風の原作『楢山節考』

 本作の原作は深沢七郎『楢山節考』で、今村昌平版の映画化もあります。深沢七郎は愛好した谷崎潤一郎の『蘆刈』『春琴抄』『盲目物語』のような口語的語り口やモダニズム、またハリウッド映画や米文学、ロックンロールなど、アメリカ文化から顕著な影響を受けています。

 深沢七郎『楢山節考』はホーソン『緋文字』やポー『アッシャー家の崩壊』のようなアメリカ文学を代表するジャンル、南部ゴシックの日本版のような内容でした。南部ゴシックはゴシック文学のロケーションをアメリカ南部に移したジャンルで、封建的な土地柄における因習の中での実践の悲喜劇を描きます。深沢七郎『楢山節考』『笛吹川』もそれを前近代の日本に舞台を移したものになっております。

 また深沢七郎『楢山節考』の卓越した部分は『伊勢物語』のような歌物語の伝統の上で、フォーク・ロックやアメリカ文化、文学のパロディを展開したということで、そのような豊かな語りの手法が人の心を捉えたのでした。

歌舞伎、浄瑠璃など舞台劇の様式

 本作品はそんな原作を脚色するにあたって、黒子の口上を導入したり、定式幕をフレームに捉える演出だったり、ほぼ全編セット撮影だったり、舞台劇の様式をあえて取り入れることで、独特の人工的なセットの醸すペーソスやアンニュイなムードを演出しています。小津安二郎監督作品(『東京物語』)やバートン(『バットマン』)、市川準監督作品と重なる印象です。

 このような手法によって語り物の影響が強い原作のムードや語り口を巧みに再現しています。技巧的な語り口でも篠田正浩監督『心中天網島』とは雲泥の差です。

 

物語世界

あらすじ

 信州の山々の間にある貧しい村。村の年寄りは70歳になると「楢山まいり」に行くのが習わしで、口減らしのために犠牲にならねばなりません。息子の後妻も見つかり、心残りもなく安心したおりんです。

 孝行息子の辰平は、「楢山まいり」に落ち込んでいます。しかし長男のけさ吉が近所の娘の松やんと夫婦となり、妊娠しているので食料不足が深刻化しています。

 もうすぐ正月になる冬の夜、辰平は母を背負って「楢山まいり」へ出発します。辰平は帰り道、舞い降ってくる雪を見ます。

 辰平が七谷の上のところまで来たとき、隣の銭屋の倅が背板から父親を谷へ突き落としていました。

 家に戻るも、母への思いを捨てきれない辰平でした。

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