始めに
ゼメキス監督『ロジャー=ラビット』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
スピルバーグ流の新古典主義
本作の演出家ロバート=ゼメキス監督はスティーブン=スピルバーグ(『ジョーズ』『インディ=ジョーンズ』シリーズ[1.2.3.4])の衣鉢を継ぐ新古典主義者として知られています。その点では大林宣彦監督(『ふたり』)、黒沢清監督(『CURE』)などと重なりますが、ゼメキスのその手腕は並はずれており、黒沢清すら上回っているようにも感じられます。スピルバーグのフォロワーとしては、ジョー=ジョンストン(『ロケッティア』)、シェーン=ブラック(『ザ=プレデター』)にも匹敵します。
世界観
舞台は1947年のハリウッドで、トゥーン(アニメーションキャラクター)が実社会に存在しているという設定で、トゥーンと人間の共存が描かれています。
先に撮影された実写にアニメーションを合成する形で、アニメと実写が融合したスタイルです。
フィルム・ノワール
物語は全体的にはフィルム・ノワールの様式を踏まえる探偵ものとして展開されていきます。
「ノワール」という言葉は、1945年にパリの出版社ガリマールが、犯罪小説レーベル「セリ・ノワール」叢書として使用し、英語圏でも、映画ジャンル「フィルム・ノワール」としてこの語は用いられ、映画ジャンルとして定着を見せていきます。フィルム=ノワールという呼称はヒューストン監督の『マルタの鷹』など、ある種の様式を備えた作品に対して46年頃から、セリ=ノワールにあやかって言及するようになったものです。
もともと『マルタの鷹』はフィルム=ノワールジャンルにコミットしようとしたのでなく、それは呼称としてあとから成立したものなのですが、とはいえ『マルタの鷹』はこのジャンルを特徴づける暗い陰影と心理劇を抱えています。
原作との異同
本作は原作のゲイリー=K=ウルフ『Who Censored Roger Rabbit?』があって全然違う内容です。小説は1980年代を舞台としているものの、現実の人間と漫画のキャラクターが共存する世界を舞台としています。小説に出てくるのは主に漫画のキャラクターであり、アニメのスターではありません。たとえばディック=トレイシー、スヌーピー、ダグウッドとブロンディ=バムステッド、ビートル=ベイリー、ヘーガー=ザ=ホリブルなどです。
原作では、トゥーンは危険な撮影のためにスタントマンとして自分の分身を作る力を持っています。通常、分身は数分から長くても数時間で消滅します。
原作では、ロジャー=ラビットはなんと犯人です。ロジャー=ラビットのオリジナルとロジャーの上司ロッコが殺された、探偵のヴァリアントが捜査します。最終的にロッコの殺人犯はオリジナルのロジャー=ラビット自身であると分かり、動機はロッコがジェシカを盗んだことであり、アリバイ作りのためにドッペルゲンガーを生成していました。ロジャーはヴァリアントのオフィスに凶器を仕掛けて陥れようとしたものの、誤ってランプの妖精ジーニーを召喚して撃たれて死んでしまいます。
物語世界
あらすじ
トゥーンと人間が共存している、架空の1947年。アニメーション映画スターであるロジャー=ラビットは今日もベビー=ハーマンと共に映画撮影をしています。
しかし、いつもの調子が出ずNGばかりです。ロジャーの妻であるジェシカ=ラビットが浮気をしている噂があるからでした。ロジャーを心配した映画会社の社長のマルーンは私立探偵を雇います。一方、私立探偵のエディ=バリアントは、かつてトゥーンに関わる仕事が大好きだったものほ、一緒に探偵をやっていた弟をトゥーンに殺害され、トゥーンを憎み酒浸りの生活を送っていました。
エディはマルーンにジェシカの浮気現場を押さえるよう依頼されます。生活に困っていたエディはこの依頼を受けます。
やがて彼女の浮気の証拠をつかみ、写真をロジャーに見せた翌日、ジェシカの浮気相手にしてトゥーン=タウンの所有者であるマービン=アクメが殺害されます。金庫を頭上から落とされるという手口によるもので、それはかつてエディの弟が頭の上にピアノを落とされて殺された方法と全く同じでした。
この事件に、新任のドゥーム判事が乗り出します。彼はトゥーンを嫌い、不死身のトゥーンを溶かして元の絵具に戻す溶解液「ディップ」を発明していて、容疑者であるロジャーを「処刑」しようとします。逃亡犯となったロジャーはエディの私立探偵事務所に逃げ込んで救いを求め、エディはロジャーを匿いつつ調査を進めます。
エディは、ガールフレンドのドロレスを頼ってバーを訪れます。バーには、禁酒時代の隠れ部屋があったので、ロジャーをここに隠し、ドロレスには社長を失ったトゥーンタウンの権利を、誰が欲しがっているか探るよう依頼します。
エディも調査の為に事務所へ帰ると、そこへジェシカが現れます。彼女は、浮気は確かにでっち上げだが、自分もマルーン社長に脅されていたと言います。
二人きりで押し問答していると、調査報告に来たドロレスに、誤解までされます。なんとかドロレスをなだめ、調査の結果を教えてもらいます。トゥーンタウンに入札したのはマルーンではなく、クローバーリーフという会社で、街の鉄道会社を乗っ取っていました。阻止するには、アクメの遺言状が必要で、タイムリミットは夜中の0時だそうです。
バーが騒々しくなります。中では、隠れているはずのロジャーが店の客を観客にショーをやっていました。エディは怒り、ロジャーを隠し部屋に放り込みます。
騒ぎを聞きつけた判事とイタチが店にやって来てしまいます。判事はロジャーに5000ドルの懸賞金をかけていました。しかし、このウサギに笑わせてもらった客たちはロジャーを裏切りません。判事はステッキで中途半端なリズムを刻み続け、完璧なリズムに仕上げないと我慢が出来ないロジャーをおびきだします。
ロジャーは捕まり、ディップに浸けられそうになるものの、ロジャーはエディにお酒を飲ませられ、ロケットのように飛び出します。これに乗じてバーを抜け出し、イタチに捕らえられていたトゥーンのタクシー、ベニーを救います。
映画館に逃げ込むロジャーとエディですが、グーフィーのコメディ映画にニコリともしないエディに、ロジャーは不機嫌の理由を尋ねます。エディは、弟のことを話します。トゥーンタウンの銀行強盗を追っている時、トゥーンにビルの上からピアノを落とされて、潰されたのでした。エディは今でも犯人の笑い声と、赤く光る眼、甲高い声を忘れられません。
ドロレスが合流し、映画館を去ろうとする三人ですが、映画はニュース映像に変わっていて、マルーン社長が、クローバーリーフ社に会社を売るそうです。エディは、マルーン社長との直接対決を決めます。
社長室では、マルーン社長もピストルを隠して待っていましたが、。エディは社長を追い詰め、自白をさせます。マルーン社長は黒幕ではなく、彼はスタジオを売りたがっていたものの、アクメの土地とセットでないと売れなかったので、ジェシカを使って浮気現場を仕組んだのは、アクメを脅すためでした。殺す意図はなかったのでした。
そこに、物陰からライフル銃が発射され、マルーン社長は撃たれてしまいます。エディは間一髪で逃げ、外を確認すると、走り去っていくジェシカの後ろ姿が見えます。慌てて車に戻るものの、車に残したはずのロジャーがおらず、ロジャーは、ジェシカにフライパンで殴られ気絶し、ジェシカの車に詰め込まれていました。
ジェシカとロジャーを追いかけ、トゥーンタウンに向かうエディです。ついに、ジェシカを追い詰めると、彼女もエディに向かってピストルを構えるものの、彼女が狙ったのはエディの背後に迫るドゥーム判事でした。判事が落としたライフルは、アクメを撃ったものと同じでした。黒幕はドゥームなのでした。ジェシカがロジャーを気絶させたのは、愛する夫をドゥームから匿うためでした。
その間に、ロジャーは再びさらわれ、エディとジェシカは、ベニーを呼び出し、トゥーンタウンを飛び出します。すると、町の外には判事がおり、道にディップを流されます。ベニーはタイヤが溶け、二人も捕えられ、トゥーン工場へと連行されます。
工場で、縛り上げられるロジャーとジェシカ。エディも、二人を置いては逃げられない。ドゥームは、自らの野望を語り始めた。鉄道やトゥーンタウンを買い占めたのは、街に8車線の立派なフリーウェイを通す為だ。道路沿いには、店やタイヤショップが立ち並び、巨大な看板が乱立するだろう。判事の地位は勇退し、クローバーリーフ社の株は買い占めてある。この夢の為に、トゥーンタウンは邪魔なだけだ。ディップを搭載した特製の放水車で、街ごと消し去ってやろう。
イタチたちが、放水車でラビット夫妻二人を狙います。エディは、ドゥームが席を外したすきに、突然踊り始めます。エディが歌い踊るさまを見て、イタチたちは笑い出し、笑いすぎてイタチは死んでしまいます。
イタチ退治には成功したものの、放水車は止まりません。操作に苦戦するエディの所に、ドゥームが戻って来ます。
戦いのなかドゥームはローラー車の下敷きになりますが、ペラペラになって立ち上がります。彼もまた、人型のマスクをかぶったトゥーンでした。両目は赤く光り、甲高い声ぇす。エディの弟殺しの犯人でした。
ドゥームはエディに襲い掛かるものの、ディップが噴出し呑まれてしまいます。自らの作ったディップに、ドゥームは溶けていき、。彼の黒い衣服と人型のマスク、そしてアクメ殺しの現場に残されていたのと同じ黄色いインクが残ります。
ロジャーとジェシカは助けられます。ふと、ロジャーはエディの服に青いインクが付いているのを見つけます。これは、アクメが生きていた時、ふざけてエディに付けた「消えるインク」でした。
突然ひらめいたエディは、傷心のロジャーがジェシカに宛てて書いたラブレターを取り出すと、だんだんとインクが浮かび上がります。
「トゥーンタウンは、すべてトゥーンたちのものとする」、それがアクメ社長の遺言でした。
エディも、友情の印としてロジャーにキスをします。



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