始めに
始めに
今日はカンヌにあやかって、パルムドールを取った名作『パリ、テキサス』レビューを書いていきたいと思います。
演出、ジャンル、ムード
ヌーヴェルバーグ、ニコラス=レイ流のリアリズム
ヴィム=ヴェンダースは私淑したジャンリュック=ゴダール(『軽蔑』)、ニコラス=レイのようなリアリズムを特徴とします。ヴェンダース監督は同時期に脚光を浴びたジム=ジャームッシュのような演出家と比べるとどうにも手数は少なく器用貧乏でムラっ気もあります。しかし古典的英雄神話、『天路歴程』などのピューリタン文学、ドイツロマン主義を源流とする、ロードムービーをものす手腕に関しては卓越しています。
この作品は初期の『都会のアリス』『さすらい』『まわり道』などのロードムービーと比べるとスタイルとしてずいぶん洗練されていて、演出家としての成長を感じさせます。
ロードムービー、ビートニック的なドラマ
この作品はビートニクの作家の影響を感じさせます。特にジャック=ケルアック、アレン=ギンズバーグのような、英雄譚のパロディとしての旅文学のエッセンスを見てとることができます。初期のヴェンダース作品というのはケルアック『路上』のように散漫で、スタイルとしては荒削りでしたが、エモーションを喚起するところがありました。本作品はそれらよりずっと洗練されて、メロドラマとしてスタイルが完成されています。
旅はトラヴィスにとって、自己物語を洗練させるためのツールで、どこかへ止まることはできません。それを象徴するかのようなマジックミラー越しの再会シーンが印象的です。
フィクション世界
あらすじ
妻子を捨てて失踪した兄のトラヴィスが砂漠で行き倒れていたという連絡を受け、ウォルトは、トラヴィスの妻・ジェーンとその息子が待つロサンゼルスへと向かいます。こうしてトラヴィスと妻、またそれを取り巻く人々との、束の間の交流が描かれます。
当初、全く喋らなかったトラヴィスですが、やがて自分がテキサス州パリスへ行こうとしていたことを明かします。トラヴィスによると、パリスは両親が初めて交わった土地であり、それ故彼はパリスに土地を買ってあるそうです。
ロサンゼルスで息子のハンターと再会したトラヴィスは、ある日、ウォルトの妻で義理の妹に当たるアンから、ヒューストンにいる妻のジェーンからハンター宛に月に一度、決まって送金があることを教えられます。トラヴィスは中古車を買い、ハンターとヒューストンへ向かいます。同地でジェーンと再会したトラヴィスは、放浪の旅に出た理由をジェーンに告白し、再び心が通じあいます。
トラヴィスは再び家族3人で暮らすことは叶わないことを語り、ジェーンに息子を託して放浪の旅に出ます。
登場人物
- トラヴィス(ハリー・ディーン・スタントン):根無草であちこちを漂流している。妻のもとに止まるつもりはなく…
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・青山真治監督『Helpless』、村上春樹『海辺のカフカ』:ビートニク的放浪のドラマ



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