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北野武監督『その男、凶暴につき』解説あらすじ

1980年代解説
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始めに

北野武監督『その男、凶暴につき』解説あらすじを書いていきます。

演出、背景知識

日活ロマンポルノ(神代、若松)流モダニズム、松竹ヌーヴェルバーグ、東映

 北野武監督は俳優としてのキャリアが先ですが(大島渚監督『戦場のメリークリスマス』など)、大島渚などの松竹ヌーヴェルバーグやその先駆となったヌーヴェルバーグからの影響が顕著です。北野監督はカマトトぶる傾向がありつつ結構映画を観て消化してはいるのですが、とはいえタランティーノ(『パルプ=フィクション』)、スピルバーグ(『ジョーズ』『インディ=ジョーンズ』シリーズ[1.2.3.4])、黒沢清(『CURE』)などと比べると映画史の全体性や体系性への理解は欠いています。そのため本作における作家主義的意匠やメタな要素も滑っています。

 とは言え演出力は『ソナチネ』など初期監督作から圧倒的で、神代辰巳監督などの日活ロマンポルノの最良の部分を受け継いでいる印象です。東映の工藤栄一監督を連想させる、ブレッソンやメルヴィルに習ったミニマリズムが特徴です。

 ただ本作はまだそうした演出スタイルが固まる前の作品で、若松孝二と大差ない凡作度合いです。ダーティハリーシリーズみたいなはぐれ刑事ものですが、クオリティは遠く及ばずです。

野沢尚脚本とフリードキン監督『L.A.大捜査線/狼たちの街』

 脚本を手がけた野沢尚は、北野武に内容が大幅に改編されたことに納得出来ませんでした。もともと野沢が北野にフリードキン監督『L.A.大捜査線/狼たちの街』を推薦し、これを参考にして脚本をリライトするなどしたらいいといったところ、北野武はこの作品から影響を受けすぎて、かなり脚本を『L.A.大捜査線/狼たちの街』そのまんまに変えてしまったのでした。

 『L.A.大捜査線/狼たちの街』は偽札犯に殺された同僚の仇を討つべく悪戦苦闘するシークレット=サービス捜査官の姿を描くバディもののフィルムで、復讐にとらわれるはぐれ刑事的な主人公が暴走気味に活躍し、終盤で自らも命を落とすながれも共通です。他方でフリードキン監督『L.A.大捜査線/狼たちの街』では、亡くなった主人公の仇を相棒がとるのにたいし、北野武監督『その男、凶暴につき』では、相棒の菊地は最後に裏切って、犯罪組織に加担します。

物語世界

あらすじ

 一匹狼の刑事である我妻諒介は凶暴ゆえに署内から異端視されます。

 ある晩、浮浪者を襲った少年の自宅へ押し入り、暴行を加えて自白させます。

 麻薬売人の柄本が惨殺された事件を追ううち、青年実業家の仁藤と殺し屋である清弘の存在にたどり着いたが、麻薬を横流ししていたのは、諒介の親友で防犯課係長の岩城でした。やがて岩城も口封じとして自殺に見せかけて殺されます。

 若い菊地は諒介と組むことになります。清弘の仲間たちは知的障害の少女を諒介の妹と知らずシャブ漬けにして輪姦します。諒介は刑事を辞めて、岩城の復讐のために仁藤を撃ち殺します。さらに清弘もアジトで射殺するが、その死体にすがるのは変わり果てた妹の灯でした。諒介は最愛の妹も射殺します。その時、背後から忍び寄った仁藤の部下・新開が諒介を射殺します。

 菊地に岩城の代わりをさせて、麻薬の密売を引き継ぐことになリます。

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