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役所広司の代表作!!『Shall we ダンス?』解説あらすじ

1990年代解説
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始めに

始めに

 先日、役所広司さんがカンヌ主演男優賞を獲得しました。その記念ということで、彼の代表作『Shall we ダンス?』のレビューを書いていきます。

演出、ムード、ジャンル、背景知識

小津安二郎流の松竹蒲田調、伊丹十三流の風習喜劇

 この作品は小津安二郎(『東京物語』)流の蒲田調の衣鉢を継ぐモダンセンスと、伊丹十三流の風習喜劇の要素を併せ持っています。絵作りは小津のように洗練され、また企画の着想は、伊丹十三のように、日本という文化的伝統の中での実践への批評性に富んでいます。本作は、小津が中年サラリーマンの不倫から始まる物語を描いた映画『早春』を下敷きに展開されています。

 伊丹十三は企画の着想はともかくとして、演出家としての力量には疑問のある部分がありましたが、この作品は松竹蒲田調のような洗練された演出スタイルで展開されるため、そのような印象は抱きません。

 小津と伊丹十三のいいとこどりのような演出スタイルです。馬場監督(『バブルへGO!!タイムマシンはドラム式』)のホイチョイ映画のような良質のスクリューボールコメディになっています。

異国オペラ、日本版ミュージカル

 作品は『王様と私』(1956年版)へのオマージュが捧げられるなど、ミュージカルや、その前史としての異国オペラの影響が顕著です。

 プッチーニのオペラに代表される情緒あふれる異国オペラに対するパロディとして本作品は、日本にとって異なる文化である社交ダンスを通じて、プチブルジョアの中年男性が自己実現を果たす様をコミカルかつ多幸感あふれる筆致で描いています。異なる文化との交わりの中で、役所広司演じる杉山正平は、自己の新しい一面を発見して自己物語を洗練させ、また家族との関係も修復していくことになります。

物語世界

あらすじ

 東京に住む会社員、杉山正平は、妻・昌子、娘・千景と三人暮らしです。余裕のある暮らしでありつつ、どこか満たされないものを感じてもいます。そんな中、社交ダンス教室の窓越しに岸川舞を見て、その姿に惹かれます。それがきっかけに杉山はダンス教室へ足を向けます。

 グループレッスンの指導は岸川舞ではなく、ベテランのたま子先生の担当でしたが、同時に入会した服部や田中と親しくなり、長年通っている高橋豊子の押しの強さに圧倒されつつも、たま子先生の指導を受けながら社交ダンスに熱中します。しかしある夜、舞を食事に誘うと、安易な気持ちでここに来てほしくないとたしなめられます。

 舞は世界大会にも出場した一流のダンサーですが、今はこのダンス教室の経営者である父に言われていやいや講師をしています。

 ある日、正平はダンス教室で会社の同僚の青木と顔をあわせ、お互いに驚きます。青木は誰にも内緒で続けているダンスには人一倍熱心です。ただ人づきあいが下手で、パートナーに恵まれないのでした。

 急に夫の帰宅が遅くなったことを心配した正平の妻は、三輪の探偵事務所を訪れて調査を依頼します。やがて夫がダンス教室に通っていることを知ると、浮気ではなかったことにほっとしながらも驚きます。

 たま子先生の勧めで正平は豊子とペアを組み、東関東アマチュアスポーツ大会に出場することになり、その指導は舞がします。熱心に練習を続ける正平の姿に、舞の心の中にもダンスに対する情熱が蘇ります。

 大会当日、正平は見事なダンスを披露します。ところが観客席には、探偵の三輪に勧められ、正平には内緒で彼のダンスを見に来ていた妻と娘がいました。娘が思わずかけた声援によって家族が来ていることを知った正平はうろたえます。その直後、他のダンサーとぶつかるアクシデントでよろけた豊子を支えようとして衣装のスカートを踏み破けてしまい、ダンスも中断します。

 大会後、正平はダンスをやめようとして、教室にも行かなくなります。ある日、正平の家を青木と豊子が訪問し、ダンスを続けてほしいこと、舞が教室を辞めて海外で社交ダンスをする決意をしたことを告げ、舞のお別れパーティーに誘われ、舞からの手紙を正平に渡します。手紙には舞の過去のつらい経験と、正平と出会ってからの変化がつづられていました。

 しかしダンスを再開する気持ちにならず、正平はパーティー前夜、ダンスを続けてほしいと言う妻につい当たってしまうものの、娘にかけられた言葉で我に返り、妻に謝罪します。

 舞のお別れパーティーが始まると、決心がつかない正平はパチンコ店にいました。しかし、帰宅するつもりで乗った電車からダンス教室を見上げると、窓には「Shall we ダンス? 杉山さん」というメッセージがありました。

 パーティーが終わりに近づき、舞のラストダンスの相手を舞自身が選ぶことになった瞬間、会場にスーツ姿の正平が現れます。舞は笑顔で正平に近づくと、「Shall we dance?」と声をかけます。

登場人物

  • 杉山正平(役所広司):妻と娘と三人暮らし。
  • 岸川舞(草刈民代):ダンス講師。講師としての仕事に満足しておらず…

テーマ、モチーフ

 異なる者や文化との交わりによって成長するという主題が見られます。例えば英国のグランド=ツアーのように、異なる世界を冒険、開発することで、新たな自分や他者の存在を発見し、より善き生を実現するあり方が描かれています。

総評

斬新な企画、洗練されたスタイルの佳品

 日本版ミュージカルという斬新な企画でありながら、極めて完成度の高い作品です。おすすめです。

関連作品、関連おすすめ作品

・『王様と私』:異国オペラ風ミュージカル

・伊丹十三監督『タンポポ』、『静かな生活』(大江健三郎原作)、『マルサの女』:先輩格の伊丹十三の代表作

参考文献

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