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クローネンバーグ監督『クラッシユ』解説あらすじ

1990年代
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始めに

クローネンバーグ監督『ザ=クラッシユ』解説あらすじを書いていきます。

演出、背景知識

新古典主義

 本作品の演出家・クローネンバーグは卓越した新古典主義者です。アートワールドの中の既存のスタイルの歴史にアクセスし、独自の演出を構築しています。本作品においてもドイツ表現主義、ハマーフィルム、ロジャー=コーマンの怪奇映画作品などに対するオマージュが随所に見えます。その辺り黒沢清、塚本晋也、リンチと重なります。

 アート映画の前史としてT=S=エリオット『荒地』、ジョイス『ユリシーズ』などの新古典主義の作品がありますが、そうした古典主義はゴダール(『ゴダールのリア王』)やトリュフォー(『アデルの恋の物語』)に受け継がれ、さらにその後、クローネンバーグ、リンチ(『ブルーベルベット』)、黒沢清(『CURE』)、塚本晋也(『鉄男』)などへと継承されました。

アート映画に影響したシュルレアリスムのカウンターカルチャー、アウトサイダーアート

 アート映画にはシュルレアリスムの作家コクトーも関わっているなど、シュルレアリスムからの影響が特に顕著です。

 シュルレアリズムにおける代表格のアンドレ=ブルトンは実在の若い犯罪者に着目するなど、既存のモラルや法を相対化する存在を追求するアウトサイダーアート、カウンターカルチャーを展開しました。

 またブルトンは経験的な物理法則や素朴な物理的直感を裏切る要素を孕む幻想文学(カフカ、ゴーゴリなど)に着目し、既成の芸術やブルジョア社会へのアンチテーゼとしてそれを捉えました。

サド的な生の哲学

 シュルレアリズムにはサドという作家も顕著な影響を与え、そのアブノーマルな性描写は以降のモダニズムのモードに影響し、ロブグリエ『快楽の園』、川端『眠れる美女』、クローネンバーグ監督『クラッシュ』を生成しました。

 本作は車の事故に性的快楽を感じる共同体におけるアブノーマルなセックスを描きます。グループは交通事故による破滅による興奮から、アナルセックスなど逸脱的セックスに溺れます。

物語世界

あらすじ

 カナダのトロントでCMのプロデューサーをしているジェームズは、妻キャサリンと倦怠期を迎え、普通の性行為では物足りなくなります。

 ある日ジェームズは空港へ向かう途中のハイウェイでよそ見運転から交通事故を起こし、事故の相手であるレミントン夫妻の夫は死亡し、妻のヘレンとジェームズは同じ病院に収容されます。病院内でヘレンに出会ったジェームズは、彼女に付き添う男ヴォーンから事故の写真を見せられます。夫の死に平然とするヘレンに違和感をもちつつ、ジェームズは自分の事故車を見に行き、彼女に再会します。

 ヘレンを乗せて車を走らせていると、ジェームズは他の車と接触事故を起こし、ヘレンは彼に近くの駐車場へとまらせます。駐車場で、2人はカーセックスをします。自動車事故で興奮するヘレンは、交通事故に性的快感を覚える「クラッシュ・マニアの会」にジェームズを誘います。

 その主催者のヴォーンは、シルバーのポルシェ550を使ってジェームズ=ディーンの事故死を再現する正面衝突を起こし、ギャラリーは興奮します。

 ヴォーンの仲間のガブリエルやシーグレイブが集まる家で、自動車事故のビデオを鑑賞したり事故被害者の写真を見たジェームズは、次第に車両事故に惹かれます。

 ある日ジェームズは、キャサリンの車の背後から煽り運転をするヴォーンを目にします。バックミラーでヴォーンを確認したキャサリンはスリルを感じ、並走する車から2人を見るジェームズも興奮します。

 その夜、キャサリンはヴォーンの肛門やペニスを想像しつつ、ジェームズを相手にアナルセックスをします。ジェームズは後ろから彼女の肛門を突きながら射精します。キャサリンは、直腸内に精液を放出しているのを感じて興奮します。

 ひき逃げ事件の疑いで、警察に取り調べられたヴォーンを迎えに行ったジェームズとキャサリンは、3人でドライブをし、途中で交通事故の現場に遭遇します。ヴォーンは夢中でカメラで撮影します。そこにはジェーン=マンスフィールドの事故死を再現し、死んでしまった仲間のシーグレイブの姿がおり、ヴォーンは感動します。

 洗車機で車を洗っている間、興奮したヴォーンとキャサリンは後部座席でセックスを始め、それをバックミラーでジェームズは目にします。

 翌日、ガブリエルとジェームズはベンツの新車展示会を見に行きます。交通事故から両脚に歩行用ギプスを付けているガブリエルが助手席に座る姿を見て、ジェームズは自分が勃起しているのに気づき、2人は場所を変えてカーセックスします。ヴォーンは自分の身体に車のハンドルの刺青を彫り、ジェームズも身体に車のエンブレムの刺青を入れます。

 車で帰るとき、ジェームズはヴォーンの尻でアナルセックスをします。

 キャサリンが車を走らせていると、煽り運転で彼女の車に体当たりするヴォーンは、高架下へ転落し、バスに激突して死亡します。

 しかしそれでもジェームズがキャサリンの車にクラッシュをかけ、彼女の車は縁石を乗り超えて斜面を転がります。運転席から投げ出されたキャサリンに、ジェームズはズボンのファスナーを下ろし、怪我で動けない彼女とセックスします。

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