始めに
ノーラン監督『バットマン ビギンズ』解説あらすじを書いていきます。
演出、背景知識
アメコミ原作映画
アメコミ原作映画に関しては30年代ごろからあり、すでに長い歴史的な蓄積があるジャンルなのですが、このころのヒット作はバートン版『バットマン』シリーズ(1.2)やドナー監督『スーパーマン』のような感じで、象徴主義演劇風のカリカチュアライズや古典的なアラン=ドワンや連続活劇風の牧歌的なコメディアクション路線がメジャーでした。やがてライミ監督『スパイダーマン』シリーズ(1.2.3)のような上質なメロドラマ路線やプロヤス監督『クロウ/飛翔伝説』みたいなリアリズムベースの厨二病路線(ノーラン監督『ダークナイト』シリーズ[1.2.3]、スナイダー監督『ウォッチメン』)がヒットをかましたりトレンドになってモードを形成していくのでした。
本作はノーランお得意のキレの悪い松竹大船調チックな演出が炸裂し、寒い厨二病ドラマを盛り上げてくれます。
リバタリアンSFのパロディ
本作はリバタリアニズムSFへの異議申し立てなテーマを孕んだSFになっていて、つまるところ私刑の是非や世界の警察たらんとするアメリカというネーションの象徴たるバットマンの苦悩を描くドラマになっています。
本作の主人公のバットマンは、自身のありかたや正義に疑いを持っています。自身の私刑は本当に正義なのか疑念を持ち、葛藤します。自身がゴッサムシティのために必要であることは理解しつつも、自分のような存在が不要になることを強くのぞんでいます。
『キック・アス』もそうですが、ヒーローもののパロディというかメタ的な内容で私刑やリバタリアン的なイデオロギーの是非とかを展開するのは、出てくる企画でしょうが、あんまり要領が悪くて薄味だと鼻白むものがあります。せめて『ロボコップ』くらい健闘して欲しいところ。
物語世界
あらすじ
ゴッサム=シティの富豪、トーマス=ウェインの息子ブルース=ウェインは、幼少期に幼馴染のレイチェル=ドーズと遊んでいた時に古井戸に落ち、コウモリの群れに襲われます。以来コウモリを恐れ、両親と来たオペラでコウモリ姿の役者を怖がって退場したところ、路地で強盗に両親が射殺されます。孤児となったブルースは執事のアルフレッドに育てられます。
ブルースは世界を巡り、犯罪者と共に行動してその心理を理解しようとしました。やがてラーズ・アル・グールの代理人を名乗るデュカードから忍者集団影の同盟に誘われ、悪と戦う術を雪山で学びます。ブルースは殺人犯の処刑を断り、また同盟の目的が腐敗したゴッサムの破壊である事を知って決別し、館に放火し脱出。ラーズは死亡したものの、デュカードはブルースが助けます。



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