はじめに
スピルバーグ監督『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、演出
ヌーヴェルバーグ(トリュフォー)風の新古典主義、フォルマリズム
スピルバーグ監督は『未知との遭遇』のキャストにトリュフォーを招くなど、ヌーヴェルバーグ風の新古典主義が特徴です。
アート映画の潮流のルーツにモダニズム文学があり、例えばT.S.エリオット『荒地』、フォークナー『響きと怒り』のような古典主義的作品があります。そうした作品では神話的題材の象徴的手法によって古典や歴史にアプローチしていきますが、まずそうした古典主義の要諦は、反俗的な精神にあります。伝統や公共性を持たないブルジョワジーへのアンチテーゼとしてモダニズムにおける新古典主義はあります。
同様にスピルバーグの先達たるトリュフォー作品も、反俗的主題を保ちつつモダニズムから古典主義へと変遷をたどります。スピルバーグも本作においてアラン=ドワンやそのほかの連続活劇、剣戟映画のスタイルに学んで独自の古典主義的演出を組み立てています。
SW4的新古典主義と反帝国主義
『インディ=ジョーンズ』シリーズ(1.2.3.4)先駆としてスピルバーグも手伝っているSW4があります。SWシリーズはシリーズが5.6と進むにつれて当初のシリアル、剣戟映画のスタイルのパロディによる反帝国主義、反ベトナム戦争映画としてのコンセプトを喪失していきました。シリアルや剣戟映画の独特の空虚なムードによって帝国主義の空虚さを描いたSW4は変節し、やがてニューエイジ、精神分析、神話的象徴の手法でケバケバしく彩られたベタなモダニズムSFとなっていき、シリアルの演出を失ってしまいました。
一方でその兄弟たる『インディ=ジョーンズ』シリーズ(1.2.3.4)は当初のシリアル、剣戟映画のスタイルのパロディとしての新古典主義を維持し続けました。一方で反帝国主義的ニュアンスはやや抑え目にはなっています。
物語世界
あらすじ
1912年。ボーイスカウトの活動でユタ州の荒野を訪れたインディは洞窟で盗掘団がコロラドの十字架を発掘したところを目撃します。博物館に納めるべきと考えインディは十字架を奪います。顎に傷を負うなどアクシデントに見舞われるものの、逃げることに成功します。だが保安官に盗掘団がインディを窃盗を行ったとして訴えていたため、十字架は奪われます。盗掘団のリーダーはインディの根性を認めて自身のフェドーラ帽をプレゼントします。
時は流れ舞台は1938年。インディ・ジョーンズに、大富豪ドノバンから相談が持ちかけられます。イエス・キリストの聖杯の所在を示す重大な遺物である石板を手に入れたものの、欠けているため一部の内容が不明で、残りの情報を調べていた調査隊の隊長が行方不明になり、それを探して欲しいというのでした。


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