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クローネンバーグ監督『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』解説あらすじ

2020年代解説
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始めに

 クローネンバーグ監督『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』の解説あらすじを書いていきます。

背景知識、演出

新古典主義

 本作品の演出家・クローネンバーグは卓越した新古典主義者です。アートワールドの中の既存のスタイルの歴史にアクセスし、独自の演出を構築しています。本作品においてもドイツ表現主義、ハマーフィルム、ロジャー=コーマンの怪奇映画作品などに対するオマージュが随所に見えます。その辺り黒沢清、塚本晋也、リンチと重なります。

 アート映画の前史としてT=S=エリオット『荒地』、ジョイス『ユリシーズ』などの新古典主義の作品がありますが、そうした古典主義はゴダール(『ゴダールのリア王』)やトリュフォー(『アデルの恋の物語』)に受け継がれ、さらにその後、クローネンバーグ、リンチ(『ブルーベルベット』)、黒沢清(『CURE』)、塚本晋也(『鉄男』)などへと継承されました。

アート映画に影響したシュルレアリスムのカウンターカルチャー、アウトサイダーアート

 アート映画にはシュルレアリスムの作家コクトーも関わっているなど、シュルレアリスムからの影響が特に顕著です。

 シュルレアリズムにおける代表格のアンドレ=ブルトンは実在の若い犯罪者に着目するなど、既存のモラルや法を相対化する存在を追求するアウトサイダーアート、カウンターカルチャーを展開しました。本作も個人と政府の対立、衝突を描いています。

 またブルトンは経験的な物理法則や素朴な物理的直感を裏切る要素を孕む幻想文学(カフカ、ゴーゴリなど)に着目し、既成の芸術やブルジョア社会へのアンチテーゼとしてそれを捉えました。

ゴーゴリ「鼻」、カフカ『変身』的なファンタジー

 本作はゴーゴリ「」やカフカ『変身』からの影響が見えます。

 ゴーゴリ「」はパンの中から鼻が出てくるというファンタジックなシチュエーションから展開されるコメディになっていて、本作とモチーフ的に共通します。

 またカフカ『変身』的な、メタモルフォーゼを描く内容になっており、塚本晋也監督『鉄男』と重なります。

ファシズムSF(オーウェル)

 本作は人類の差異化を推し進める進化のなかに生きる個人と、人類の画一性を留めようとする政府との衝突が描かれるという、オーウェル『1984』的なファシズムSFになっています。これは先にもあげた通り、シュルレアリスムがアウトサイダーアート、カウンターカルチャーであるところに負うものでしょう。

 ラングやラストに描かれるソールは、個人の進化を代表する存在として描かれています。

サド的な生の哲学

 シュルレアリズムにはサドという作家も顕著な影響を与え、そのアブノーマルな性描写は以降のモダニズムのモードに影響し、ロブグリエ『快楽の園』、川端『眠れる美女』、クローネンバーグ監督『クラッシュ』や本作を生成しました。

物語世界

あらすじ

 近未来。人類は痛みを失って自傷や加害行為を楽しみ、老朽化した建物や家具の中で生きていました。様々な未知の臓器が身体に発生する者が増え、それが遺伝していくことを危惧した政府は、新臓器登録の制度化を計画中しています。

 加速進化症候群で多くの臓器が生まれるソール=テンサーは、公開手術で臓器を摘出するアーティストでした。しかしいつも体調が悪く、夢の中では痛みを感じる体質のソールは、生活を機械に頼らざるを得ないので新臓器を憎み、進化推奨派の動きを密かに政府に伝えるスパイ活動をしています。

 そんなソールに接触して来るラング。彼は、人間がプラスチックや産業廃棄物を食べるよう進化することを理想とする組織のリーダーです。ラングの息子ブレッケンは生まれながらにプラスチックを食べる最初の人類でした。しかしブレッケンを産んだ母親はそんな息子を気味悪がり、我が子を殺します。

 ブレッケンの臓器を調査するため、ソールの公開手術で解剖して欲しいと依頼するラング。しかし切開されたブレッケンの内臓は、醜い状態でした。ブレッケンの遺体は、知らぬ間に政府の手に渡り、そのように加工されていました。

 ラングはやがてライフフォーム=ウェア社の修理係に暗殺されます。ライフフォームは、政府と同様に人類の進化を恐れ、進化推奨派を暗殺していました。

 新たな臓器の影響か食事を取れなくなり、ラングが作った合成のチョコバーを食べるソール。そのチョコバーは、人体改造手術によってプラスチック食が可能になった人々の食べ物で、一般の人間には猛毒でした。しかしソールは至福の表情を浮かべ、食事のサポートマシンは急停止します。

参考文献

・”Revolution of the MInd:The Life of Andre Breton”

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