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ジョージ=A=ロメロ監督『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(68)解説あらすじ

1960年代解説
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始めに

 ロメロ監督『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』解説あらすじを書いていきます。

演出、背景知識

吸血鬼ゾンビ

 本作のゾンビは従来のゾンビ映画とは違う革新的なデザインでした。

 従来のゾンビというのは山田風太郎『魔界転生』の魔界転生で蘇る武者のような感じで、ただ術者に黒魔術で操られるだけの存在で扱いづらいモンスターでした。あと自分で仲間を増やしたりもしませんでした。映画では『恐怖城』などに代表されます。

 ゾンビの恐怖というのは、従来ゾンビ=マスターに操られてゾンビにされることや植民地世界の得体の知れなさへの恐怖であって、ゾンビそれ自体が主体的に人に危害を加えたりするわけではありませんでした。

 本作のゾンビはマシスン『地球最後の男』に似た、吸血鬼のバリエーションのような設定のゾンビで、血液などを通じて仲間を増やしていきます。ゾンビに齧られるとゾンビになるみたいな感じです。

ポストアポカリプスものとしてのゾンビ

 本作に先駆けて、マシスン『地球最後の男』がありました。

 この作品では、1970年代、人間を死に追いやった後に吸血鬼として甦らせる吸血ウイルスが蔓延し、人類が滅びる中、生き残ったロバート=ネヴィルの戦いを描きます。この作品でもラストの結末は有名ですが、本作もそのようなシニカルな風刺的な意図を導入しています。また人間という存在の恐怖を描くという点でも、本作はロメロ以降のゾンビ映画への影響が顕著です。

 また『地球最後の男』はポストアポカリプスもののSFになっています。これは、文明が頽落したのちの世界を描くジャンルです。以後、吸血鬼やゾンビもののモードとポストアポカリプスもののモードの様式は交錯していくようになります。

 加えて、ウイルスパニックホラーとしての様式もその後のゾンビ映画ジャンルと交錯していくようになります。吸血鬼がもともと(ブラム=ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』などから)疫病とかの象徴でもあったわけですが、ウイルスにより拡大するゾンビの設定はロメロ以降のゾンビによくある設定になりました。

リアリズム、モキュメンタリー

 本作はモキュメンタリー風のデザインです。全体的にニューシネマやネオレアリズモのリアリズムの影響が強く、表現主義的な甘美なムードは希薄です。

 ニューシネマ風のドライでシニカルなブラックコメディのムードは後続の作品(ライミ監督『死霊のはらわた』シリーズ[1.2.3])に影響していき、血みどろでナンセンスなスプラッターホラージャンルを生みました。

人間の恐怖

 本作はゾンビよりも恐ろしい、人間の恐怖を描いています。黒人差別など、社会派的テーマを上手く絡ませています。

 主人公のベンは黒人ですが、ゾンビから助かったのに、最終的に人間からゾンビと誤解されて射殺されてしまいます。

 ロメロ以降のゾンビ映画はゾンビに付随するメロドラマ要素が強まっていきます。『ウォーキング=デッド』などが最近だと有名です。こうした作品でも極限状態に置かれた人間の恐怖が描かれやすいです。

物語世界

あらすじ

 父の墓参りの途中、バーバラと兄のジョニーは突然ゾンビの大男に襲われます。兄を殺されたバーバラは助けを求めて近くの民家に逃げます。民家には黒人青年のベンも逃げ込み、地下室には若いカップルのトムとジュディ、クーパー夫妻(ハリー、ヘレン)と娘カレンが潜んでいました。ベンとハリーが対立するなど、混乱します。バーバラたちは、最寄りの避難所への脱出を試みるものの、トラックに給油しようとした際に漏れたガソリンに引火してトラックは爆発、トムとジュディが焼死してしまいます。

 生き残った者たちは脱出方法を探ろうとします。午前3時のニュースを見ていたが、停電が起きます。ゾンビたちはすぐに、明かりのついていない家のドアや窓を突き破って侵入してきます。混乱の中、ハリーはベンの銃を掴むものの、ベンに銃を奪われ、撃たれます。ハリーはよろめきながら地下室へと降り、娘の隣で息を引き取ります。

 カレンは負傷で亡くなり、ゾンビとなり、父ハリーの遺体を食べてしまいます。カレンは石工用こてで母親ヘレンも刺し殺します。バーバラは蘇ったジョニーに引きずり出されます。ゾンビの大群が押し寄せると、ベンは地下室に避難し、ハリーとヘレンのゾンビを撃ち殺します。

 状況がどんどん悪化していき、ベンひとりです。

 夜が明け、外部では警察や民間のハンターによりゾンビの駆除が進み混乱は収まりつつありました。ベンは地下から出て外の様子を伺います。ハンターが農家の中にいるベンを見つけ、ゾンビと勘違いし射殺しました。

参考文献

・風間賢二『ホラー小説大全[増補版]』(角川書店.2002)

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