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ルビッチ監督『天国は待ってくれる』解説あらすじ

1940年代
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はじめに

ルビッチ監督『天国は待ってくれる』解説あらすじを書いていきます。

演出、背景知識

スクリューボールコメディのルーツとしてのルビッチ

 20世紀初頭のサイレント期には、ラブ=ロマンスは洗練された古典的な舞台劇風の風俗喜劇、コメディはコメディアンがアクションで笑いを誘うスラップスティック・コメディがメインでした。

 しかし1920年代末期にトーキーが普及し会話によるジョークが可能になりました。そうして生まれたのが本作などのスクリューボール=コメディです。

 会話劇で最初に人気を集めたのはエルンスト・ルビッチ『極楽特急』(1932)などです。この映画は富豪の未亡人とその財産をねらう男女の泥棒が主人公で、三人のロマンスがテンポのよい会話で展開され、ラブロマンスとコメディを融合させた新しい映画ジャンルを築いていきます。

 本作はスクリューボールコメディに括られることは少ないですが、それと似た会話の魅力が織りなすラブコメディです。

ホークスと比較

 スクリューボールコメディを代表する監督がルビッチ、ホークス、キャプラです。

 傾向として、ルビッチはもともとかなり創作においてシェイクスピアなどイギリスルネサンス演劇やオスカー=ワイルドの演劇などの古典主義、ロマン主義演劇の文脈に負う部分が大きく、会話と人物の出入りで見せるリズミカルでスタイリッシュなデザインはそうした演劇を背景としています。

 ルビッチの演出はルビッチタッチとも言われ、小津安二郎への影響がしられます。

 ホークスもルビッチやムルナウに刺激を受けたり、同様の創作背景を持つものの、ホークスのコメディのはスペインのピカレスクの刺激から起こったフィールディング、スウィフトの文学や、ディケンズ、トウェインやその衣鉢を継ぐようなユーモア文学を背景にする部分があり、キレのよく饒舌な語りによってリズミカルな物語を展開します。

物語世界

あらすじ

 ヘンリー=ヴァン=クリーヴが地獄の受付にやってきます。ヘンリーは閻魔大王に迎えられます。閻魔大王はここへ来た人々に地獄行きか天国行きかを告げますが、ヘンリーは「自分は地獄行きで当然だ」と言います。興味を抱いた閻魔大王の求めに応じてヘンリーは自分の生涯を語ります。

 ニューヨークの上流階級の家庭で甘やかされたヘンリーは昔からわがままで女好きです。成人しても仕事につかず、祖父のヒューゴがくれる小遣いで遊び回ります。いとこのアルバートはそれと正反対の堅物で、成人してからは弁護士です。

 ある日ヘンリーは街で見かけた美女に一目惚れし、彼女が入った書店で店員のふりをして話しかけるものの、逃げられます。

 やがていとこのアルバートが婚約者マーサとその両親を紹介しにヴァン=クリーヴ家にやってきます。マーサこそあの美女で、マーサとヘンリーは驚きます。マーサの両親はカンザスの富豪ですが仲が悪く、マーサは実家から逃げ出したくてアルバートと婚約しました。

 ヘンリーはマーサを口説き、二人は親族一同が集まるパーティーから逃げ出して結婚します。

 それから十年。ヘンリーは妻と一人息子ととヴァン=クリーヴ家で暮らし、父の会社を継いでいるものの、ヘンリーの母親は相変わらず彼を甘やかします。しかしヘンリーの浮気を知ったマーサが実家に帰ります。祖父ヒューゴと追いかけたヘンリーは屋敷に忍び込み、言葉巧みに彼女を口説き、二人は屋敷を出てニューヨークに戻ります。

 ヘンリーの女好きは変わらず四十五歳になった彼はュージカルの舞台で見た女優に惹かれて彼女を口説くものの、彼女はヘンリーの息子と交際しています。息子も父親に似た女好きで、遊び歩いています。

 それでもヘンリーとマーサの幸せな家庭生活は、結婚二十五周年ののちマーサが亡くなるまで続きました。彼女の死後も若い女性を好むヘンリーの癖は直りません。

 七十歳となり、身体が衰弱したヘンリーは、中年の看護師を追い返し、続いてやってきた若く美しい看護師から口に体温計を差し込まれて興奮から急死します。

 閻魔大王はヘンリーに「あなたの地獄行きは認められない。天国であなたを待っている人たちがいるから」と告げ、天国へ昇るエレベーターへとヘンリーを送り出します。

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