始めに
始めに
今日は相米慎二『セーラー服と機関銃』についてレビューを書いていきたいと思っています。
演出、背景知識
ネオレアリズモ風のリアリズム
相米慎二は80年代を代表する監督の一人です。同時期にジュヴナイル作品を多く手がけた大林宣彦(『ふたり』)監督と比べると、大林が例えていうならば小津安二郎監督(『東京物語』)のように、古典主義的なスタイルの中でメランコリックでノスタルジックな青春の儚さを描いたとするなら、相米は成瀬巳喜男(『浮雲』)、溝口健二(『雨月物語』)に近いリアリズムで、長回しによる徹底的なリアリズム描写で青春の瑞々しさと生臭さをインモラルに描きます。
ヌーヴェルバーグのゴダール(『勝手にしやがれ』)やトリュフォー(『大人はわかってくれない』)のジュブナイルの形式主義的実験が特徴で、ランボーのようなナンセンスが展開されます。
またヌーヴェルバーグに影響した、イタリアのネオレアリズモの監督ロッセリーニ、初期ヴィスコンティのような、ドキュメンタリータッチの豪快なリアリズムが相米の特色です。
ムラっけがある作家
相米慎二という作家は、良くも悪くも天才肌です。作家でいうと村上龍(『69 sixty nine』)とかと近いかもしれないですが、早くからスタイルを完成させていて才気煥発ではありつつ、才能だけで表現を作っているというか、古典に対する批評性とか古典が構成するアートワールドへのコミットメントの中で自己の表現を位置付けて展開するような部分が希薄なため、映画作家としての道のりはどちらかというと停滞のようなものを感じさせてしまいます。助監督で仕事をしていた黒沢清監督(『CURE』)が古典主義者としての手腕が卓越していただけになおさらです。
けれども天才肌であるのは確かで、本作や『台風クラブ』など、良くも悪くも相米にしか描けない世界であるとは思います。トリュフォーと同様に、ジュヴナイルジャンルに特化した才能と言えます。
シャンソンが彩る大人の世界
主題歌「セーラー服と機関銃」が有名ですが、この曲はシャンソン風の歌謡曲で、別れた女の背中を見送る男の心情を綴る歌詞になっています。
この映画で薬師丸ひろ子演じる泉が抱く、大人の世界への不安と憧れを、センチメンタルで艶っぽい男の独白に託して歌い上げています。
物語世界
あらすじ
四人しか子分のいないヤクザ、目高組の親分が跡目は血縁者にと遺言を残して死にます。
その頃、女子高生の星泉は、成田空港の前で車に轢かれて死んだ父の貴志と火葬場で最後の別れを惜しんでいました。泉が帰りかけると、中年の男が父の遺骨に線香をあげています。泉の母はずっと昔に亡くなっていました。
泉がマンションに帰ると、マユミという女がいて、彼女は「もし自分が死んだら泉をよろしく」という父の手紙を持っていました。その日からマユミと一緒に暮す泉です。
翌日、黒いスーツを着こんだ大勢の男たちが学校の前に並びます。泉のとりまき、智生、哲夫、周平が止めるのを無視して、泉は校門に向かいます。すると、あの火葬場にいた男が歩み出て「星泉さんですね」と言います。佐久間というその男に事務所に連れていかれた泉は、そこで、目高組四代目組長を襲名してほしいと頼まれます。
佐久間の話では、親分の遺言通り血縁者を探しあてると、事故死したばかりの泉の父でした。跡目はそこから血縁者の泉に回ってきました。泉は拒否するものの、彼らの熱意にしぶしぶ承諾します。
目高組は佐久間の他に、政、ヒコ、明の三人しかいません。その日から、泉は佐久間に連れられ大組織の組長、浜口のところへ挨拶に行きます。浜口は驚くと同時に笑いだすものの、佐久間は大真面目です。
数日後、泉のマンンョンが何者かに荒されます。そこへ、黒木と名乗る刑事がやって来ます。黒木は泉の父の死は麻薬の密輸が絡んでおり、そのために部屋が荒らされたであろうこと、マユミは札付きの不良娘であることを話します。さらに、マユミも姿を消してします。
その日から数日後、組の事務所の前にヒコの死体が投げだされます。暫くして、マユミから泉に電話が入り、二人は会うことにします。マユミの父は、「太っちょ」と呼ばれる、浜口も恐れるヤクザの大親分だそうです。太っちょが動くときは麻薬が絡んでいるといいます。
泉のマンションがまた何者かに荒され、かつての佐久間の弟分、萩原に、ボディガードの明が殺され、彼女は太っちょの所に連れて行かれます。麻薬を渡せと太ょちょに迫られ、そこにマユミがやって来て、麻薬のありかを教えるから彼女を助けるように話します。娘の願いで泉を太っちょは解放します。そこへ、あの刑事の黒木が現われます。黒木は刑事の特権を利用して麻薬を密輸していたものの、あの日、成田の取締官に追われ、麻薬を隣にいた泉の父のバッグに投げこんでいました。父の愛人だったマユミは麻薬を見つけ、それを水に溶かしローションの瓶に入れてあると話します。
早速、黒木はマンションに向います。その夕、佐久間が現われ、泉を連れて逃げます。後を追おうとする太っちょの前にマユミが立ちはだかり、父を撃ちます。そこへ、マンションの黒木から電話が入り、浜口組に麻薬を横取りされたと言うと、息絶えます。
泉と佐久間は政を連れて浜口の所へ向います。「太っちょを殺したこと、麻薬も手に入ったことのお礼に目高組のシマを広げる」と言う浜口の言葉を無視して、泉は、机の上にあるローションの瓶に機関銃をブッ放します。しかし、そこで政が殺され、佐久間と二人きりになった泉は目高組を解散することにします。佐久間は堅気になると故郷に帰ります。
数日後、警察から泉に死体を確認するよう呼び出しがあります。佐久間でした。サラリーマンになって東京に出張に来た佐久間はヤクザの喧嘩を止めに入って殺されました。泉のマンションには、佐久間のサラリーマンの名刺に書かれた伝言があります。「出張で東京に来ました。留守なのでブラブラしてまた来ます」と。泉は佐久間の唇に自分の唇を重ねます。



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