はじめに
コッチェフ監督『ランボー』解説あらすじを書いていきます。
演出、背景知識
原作との違い
本作はディヴィッド=マレルのデビュー小説『一人だけの軍隊』の映画化作品であり、社会から孤立したベトナム帰還兵ランボーの戦いが描かれます。
原作と異なり、本作はランボーに殺害された犠牲者がほぼ皆無(1人は間接的に死なせてしまいますが)です。
原作のランボーはティーズルと対決をしたのち、ダイナマイトで自殺を図るものの失敗し、トラウトマンに頭を撃たれ、それに満足したまま死にます。
保安官ティーズルは、本作ではランボーを憎悪する悪役で、ランボーの理解者はランボーのベトナム時代の上官である大佐サミュエル=トラウトマン大佐ですが、原作だとティーズルもランボーの心情を理解し共感するキャラクターとして描かれ、ティーズルもまた朝鮮戦争の従軍体験を引きずる「帰還兵」です。
あと原作の舞台はワシントン州ではなくケンタッキー州です。
原作の成立
マレルの原作『一人だけの軍隊』はジェフリー=ハウスホールドの『追われる男』が下敷きです。
そちらでは主人公は、無名のイギリス人スポーツマンで射撃の名手です。1938 年の春、無名のヨーロッパの独裁者をライフルで狙おうとしており、彼の活躍を描きます。主人公は独裁者の全体主義体制によって婚約者が処刑されたことへの復讐として、暗殺を計画したことを終盤に告白します。
全体的に、個人が政治的目的のために銃器を用いてアクションを展開していく流れが共通しています。
物語世界
あらすじ
1981年12月のワシントン州。ベトナム帰還兵ジョン=ランボーは、ベトナム時代の戦友を訪ねて山間の田舎町にやってきます。しかし戦友は、戦争で受けた化学兵器の後遺症で癌になり、亡くなっていました。
戦友宅を去り、食事をとろうと街へ入ったランボーに、保安官ティーズルが声を掛けます。ティーズルはランボーが危険そうだと感じ、街を出ていけと高圧的な態度で告げ、ランボーをパトカーで市街地の外れへと追い出します。
それでも来た道を戻り街へ入ろうとするランボーを、ティーズルは公務執行妨害とサバイバルナイフ所持で逮捕し保安官事務所へと連行します。
事務所の取調室でランボーに、ベトナム時代に囚われた過去フラッシュバックします。保安官達は沈黙するランボーに高圧的に接し、小突いたり消防ホースからの噴流を浴びせたり、嫌がらせをします。そしてランボーの髭を剃ろうと羽交い絞めにし、その顔へ剃刀を近付けると、ランボーの脳裏にベトナムで受けた拷問が蘇ります。その場にいた保安官助手全員を素手で叩きのめし、ランボーはナイフを奪い返して山中へと逃げます。
ティーズルは部下と山狩りを始め、絶壁まで追い詰めます。しかしヘリに乗っていた保安官助手が独断でランボーを射殺しようとし、反撃にランボーが投げた石にで動揺したヘリから転落し、亡くなります。
これは事故だと、戦闘の停止を呼びかけるランボーですが、事情を知らないティーズル達は発砲します。ランボーは反撃へ移り、グリーンベレー仕込みのゲリラ戦で保安官助手達を1人ずつ戦闘不能にし、最後に残ったティーズルの喉元にナイフを突き付けて、この山では自分が法律だ、と言い残し、山奥へ消えます。
ティーズルが麓へ戻ると、州警察と州兵による対策本部へ、国防総省からサミュエル=トラウトマン大佐が派遣されます。ランボーのベトナム時代の上官である大佐は、被害を抑えるため、一旦ランボーから手を引いて山から下ろし、別の街へ移動したところを改めて逮捕することを提案します。しかしティーズルは自分の手でランボーを捕えることに拘り、これを聞き入れません。
ランボーを説得するため、大佐はベトナム時代のコールサインにより無線で呼び掛けます。応答したランボーは、ベトナム時代の戦友たちが彼を除いて全員死んだことを伝え、先に仕掛けてきた(first blood)のは保安官達だと言い、投降の意思がないことを伝えます。
夜が明け、追っ手に見付かったランボーは廃坑に駆け込むものほ、州兵によって包囲されます。州兵たちはランボーに恐怖し、坑道にロケット弾を撃ちこんでランボーを生き埋めにしてしまいます。州兵、州警察、ティーズルは、ランボーの死を確信するものの、間一髪で坑道に逃れていたランボーは坑道の中を進み、地上へと脱出します。
ランボーは通りかかった州兵のトラックを強奪し、荷台のM60機関銃と弾薬を携え、夜に再び街に現れます。ランボーはガソリンスタンドを爆破して注意を向けた後、保安官事務所の電源を断って近所の銃砲店を破壊し、保安官事務所に銃弾を撃ち込みます。
ティーズルは屋上の天窓にて待ち伏せていたものほ、ランボーに返り討ちにされ、屋内に転落します。とどめを刺そうとするランボーの前に、大佐が現れます。投降を呼びかける大佐に、ランボーはまだ終わっていない、戦争は続いている、と絶叫します。
ベトナムから帰還した直後に空港で一般人から浴びせられた反戦デモの罵声、孤立無援の苦悩、就職難、戦友の死のトラウマ。戦友とは、戦争が終わったらラスベガスでスポーツカーを乗り回そうと約束していたものほ、もう果たせません。
ランボーは子供のように泣きじゃくり、大佐はただランボーをその胸に抱きとめます。
ランボーは投降。大佐の手で連行されていきます。
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