始めに
リドリー=スコット監督『エイリアン』解説あらすじを書いていきます。
演出、背景知識
リドリー=スコットの背景。ウェルズ、キューブリック的フォルマリズム
リドリー=スコット監督は『闇の奥』などで知られるコンラッドからの影響が強く、本作に登場する宇宙船ノストロモ号の名前もコンラッド作品(『ノストロモ』)から取られており、コンラッド的な海洋小説の宇宙版になっています。
コンラッドはモダニズム文学に影響を与えた作家で、ポストコロニアルな主題を孕んだ内容になっていました。植民地における残虐な実践を活写しつつ、非線形の語り口で後続の作家に影響を与えていきました。
リドリー=スコットにもポストコロニアルな、反差別的なテーマはしばしば見え(『ブレード=ランナー』などにも)、本作もフェミニズム的なテーマになっています。
またコンラッドに影響された『市民ケーン』の監督ウェルズや、キューブリック風のフォルマリズムが特徴的な演出家であるリドリー=スコットですが、それほど演出は安定しません。ただ本作は演出の映画になっていて、これは脚本のオバノンがいいのだと思っています。
ダン=オバノンの貢献
ダン=オバノンはホラー映画を中心に手掛ける脚本家、監督で、とにかく演出やホラーの勘所を抑えていますので、脚本作品には『ダーク=スター』くらいしか駄作はないくらいです。
本作品も、『遊星よりの物体X』的な寄生体ホラーとパニックホラーをうまくミックスしたシチュエーションの卓越したデザインが光ります。また宇宙船内の中に潜むエイリアンの恐怖を足音や鳴き声、体液で効果的に演出しています。
Jホラーが基本的には脚本家がつくった文化なのと同様、本作も脚本家に支えられたホラーです。
ギーガーによるデザインと精神分析
本作においても『ブレード=ランナー』同様にアートワークの光る内容です。
本作のエイリアンなどの造形を手掛けるギーガーは、精神分析やシュルレアリスムに負うところの大きいアーティストで、精神分析のフロイトやシュルレアリスムがそうであるように、男根の象徴として特定のモチーフを捉えたり再現したりといった、象徴的なアプローチ、手法が見えます。
本作におけるエイリアンの造形も、男根を連想させるフォルムになっていて、それが自らの増殖を図ろうとします。
フェミニズムSF
リドリー=スコット自身が意図したことではないそうですが、本作はエイリアンのそのような象徴性から、フェミニズムSFとしてのニュアンスが生まれています。男根に侵害されつつも、一個の個人として自立するヒロインのリプリーの戦いが描かれます。
ヒロインのリプリーは当初から適切な意見を述べつつ、女性であったり地位だったりを理由に主張を受け止められず、それが船を危機に陥れます。そんなカサンドラのごときリプリーの受難のドラマが展開されていきます。
女としてのリプリーの戦いはシリーズのテーマになります。
シリーズについて
シリーズ(1.2.3.4)のナンバリング作品は四作品ありますが、二作目までの作品という声は多く、個人的にもそう思っています。それぞれの特徴として、一作目はクラシックなスタイルのパニックホラー、二作目はホラーとキャメロン得意のSF活劇の折衷、三作目は一作目に近くホラーテイストで追い縋るエイリアンから逃げ回るストーリー、四作目はデザインがギーガーなのも踏まえてシュルレアリスム風のアーティスティックなビジョンやアクションで魅せる内容になっています。
三作目は監督のフィンチャーが『ファイト=クラブ』で演出の要領を掴む前なので、若書きで今ひとつです。四作目もシリーズに期待される面白さとは違うしなんだかなあ、という感じです。3,4は前作から差別化を図ろうとする苦心は伝わりますが外してます。
物語世界
あらすじ
西暦2122年、搭乗員7名を乗せた宇宙貨物船ノストロモ号は地球へと帰還する途上でした。しかし船を制御するAI「マザー」が信号を受信し、その発信源である天体に航路を変更していたことが判明します。科学主任のアッシュによると会社との雇用契約書には、知的生命体からと思しき信号を傍受した場合は調査するよう明記されているそうです。やむなくノストロモ号は発信源の小惑星に降ります。
船長ダラス、副長ケイン、操縦士ランバートの3人が船外調査に向かい、謎の宇宙船と化石となった宇宙人を発見します。その宇宙人には体内から何かが飛び出したような傷痕がありました。その頃、船に残った通信士のリプリーが信号を解析した結果、それは遭難信号ではなく、警告であることが判明します。
3人は船に帰還したものの、リプリーは防疫を理由に船内に入れることを拒みます。しかし、アッシュの判断でエアロックが開けられます。そしてフェイスハガーがヘルメットのシールドを溶かし、ケインの顔に張り付いているのを発見します。アッシュが調べた結果、フェイスハガーは彼に酸素を供給しており、ケインは昏睡状態です。除去しようと体の一部を外科装置で切ろうとすると強酸の体液が流れ、船の床を溶かします。引き剥がすのは断念しますが、フェイスハガーは自然にケインの顔から剥がれ落ちて死にます。リプリーは死骸を捨てるべきだと主張するものの、アッシュは貴重な地球外生命体のサンプルなので地球に持ち帰るべきだと主張し、ダラスも同意します。リプリーは大事な決定をなぜアッシュ1人に任せるのかと彼に詰め寄るものの、会社の意向だと押し切られます。
船は小惑星を離陸し、地球まではまだ10ヶ月もあります。ケインは意識を取り戻し、回復したかに思われました。しかし、乗組員たちとの食事中に突然悶絶し、やがて胸部を食い破ってヘビのような生物が出現、乗組員の間を駆け抜け逃走します。ケインはフェイスハガーに体内に幼体(チェストバスター)を産み付けられていて、食い破られ死亡したのでした。
乗組員達は船内を捜索するものの、その間に脱皮し、より大型に成長したエイリアンは機関士のブレットを襲い、通気口へ逃げます。乗組員達はアッシュのアドバイスに従い、エイリアンをエアロックへ追い込み、宇宙空間へ放出することに。追い立てるためにダラスが単身通気口に進入するものの、返り討ちに遭います。
リプリーと機関長のパーカーはダラスの作戦を続行しようと主張するものの、ランバートは船を棄てて脱出艇で逃げることを提案します。そんな中、リプリーは議論に参加しないアッシュの態度に疑念を抱き、マザーに詳細を問いかけるものの、科学主任のみ閲覧可能と拒否されます。秘密解除の操作を行って命令を確認すると、会社が秘密裏に生きているエイリアンの捕獲と回収を最優先事項としていたこと、乗組員の命が犠牲となってもやむを得ないとプログラムされていることを知り、アッシュに怒ります。
真相を知ったリプリーにアッシュが襲いかかりますが、パーカーとランバートが阻止し、アッシュは破壊されます。その正体は、会社が乗組員たちを監視するために送り込んだアンドロイドでした。リプリー達はアッシュを応急修理して尋問したところ、会社はエイリアンの捕獲と回収を目的として乗組員を雇っており、その為にいかなる犠牲も顧みないこと、エイリアンは完璧な生命体で生き延びられる可能性はないと告げます。
会社との契約を守る義理をなくしたリプリー、ランバート、パーカーの3人は本船を切り離して自爆装置で爆破し、脱出艇で逃れて救助を待つことにします。しかし、二手に分かれて脱出の準備をしている間に、エイリアンは通気口から這い出てランバートとパーカーに襲いかかり、殺されます。
1人残されたリプリーは、ノストロモ号の自爆装置を起動し、猫のジョーンズを連れて脱出艇に乗り込むものの、通路上にエイリアンがいます。脱出を中断し、自爆装置の解除を試みるが間に合わず、決死の覚悟でリプリーは脱出艇の入口に戻るものの、そこには誰もいません。
ジョーンズと共に脱出艇へ搭乗、ただちに発進させます。直後にノストロモ号は大爆発したのでした。



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