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スピルバーグ監督『ジョーズ』解説あらすじ

1970年代解説
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始めに

 スピルバーグ監督『ジョーズ』について解説レビューを書いていきます。

演出、背景知識

ヒッチコック風のフォルマリズム、新古典主義

 本作品はメルヴィル『白鯨』(動物との戦い)やイプセン『民衆の敵』(獣害、災害のパニックもの)からの影響も顕著で、スピルバーグは流石に一級の古典主義者ですから古今東西の映画と文学のキャノンを消化していることが伺えます(学習障害を持っているので文学方面は映画など翻案から間接的に吸収する形にはなるでしょうが)。

 本作の演出において、顕著な影響を感じさせるのはサスペンスの巨匠ヒッチコックです。ヒッチコック監督にも『バルカン超特急』『救命艇』などの乗り物サスペンスがありますが、そうした作品に勝るとも劣らない内容です。船上でのサスペンスはサメがいつ襲ってくるかがわからず、緊張感が画面の上から途切れることがありません。クルーゾー監督『恐怖の報酬』を連想します。

サミュエル=フラーとの関係

 フラー監督に『ザ・シャーク』(“Shark!”)があり、この作品をスピルバーグは先に見ていたことに加えて、フラーのことを好んでいました。『ザ・シャーク』も人喰いサメを描いた作品で、とはいえサメよりも金塊探しがメインです。この作品から本作は影響されたと思います。

初期作品が優れるスピルバーグ

 スピルバーグは本作やインディ=ジョーンズシリーズ(1.2.3.4)など、初期作品(80年代半ばまで)の作品に名作が集中しています。

 個人的な見解ですが、スピルバーグは映画監督業における対人関係が苦手でそのせいで映画作りに打ち込めないのかもしれないと思っています。映画監督の仕事というのは、1.美的センスを要する映画の演出デザインをする業務に加えて、2.現場監督を中心に映画作りにおける総合監督、交通整理の業務があります。この2つは別のスペックを要するのですが、映画監督にも向き不向きがあります。2だけうまいのが今村昌平監督で、基本的にこちらはビジネスで成果を出すような、仕事がテキパキ捌けて人タラシな人が強いのです。スピルバーグは1が得意で2が苦手なタイプです。

 スピルバーグは『未知との遭遇』『宇宙戦争』に描かれるように、離婚のトラウマによる愛着障害的傾向が顕著です。映画仲間の気の合う奴らと連むのは楽しいでしょうが、付き合いは選ぶタイプで、対人関係が苦手です。そんな中、若くして成功したスピルバーグへのやっかみ、バッシングがあり、82年に起こった『トワイライトゾーン』(製作で関与)撮影中の事故死がそれを助長しました。そんなこともあって、スピルバーグは80年代半ばから、トラブルを避けつつ結果の伴う露骨な賞取り映画に気持ちが剥いたのかな、と思っています。ある時からやりたいことや得意なことをやらなくなっていった印象です。

物語世界

あらすじ

アメリカ東海岸に位置するアミティ島。

ある夕暮れ、ビーチパーティに参加していた若い女性クリッシーが薄暗い海に入って泳いでいると、何かによって水中に引き込まれ行方不明になります。警察署長のマーティン=ブロディは、浜辺にクリッシーの死体の一部が打ち上げられたと連絡を受けます。検死により、サメに襲われた可能性が高いと聞いたブロディは直ちにビーチを閉鎖しようとしますが、ボーン市長ら町の有力者たちは夏の観光収入は大事だと説いて反対。結局、閉鎖はされず、検死報告書も市長の意を受けてボートのスクリュー事故に書き換えられます。

 その結果、数日後の昼間には大勢の目の前で一人の少年アレックス=キントナーがサメの犠牲となり、人喰いザメの存在が町に知れ渡ります。

 少年の両親は息子の仇を取るため、サメに3000ドルの懸賞金を掛けようとします。ブロディは混乱をもたらすとして反対しようとするものの、サメの被害を知っていたのに対応しなかったとキントナー夫人から責められます。また、地元のプロのハンターであるクイントは、懸賞金額が低くサメを舐めているとし、10000ドルでなければ動かないと宣言します。

 懸賞金に釣られて町の人間のみならず、島外からも素人のハンター達が押し寄せます。ブロディは、海洋研究所に依頼してサメの専門家を手配し、やってきた若い海洋学者マット=フーパーは、クリッシーの遺体の傷から、標的はかなり大型のサメだといいます。

 その中で、ハンターの1人によって2メートルを超える大型のサメが捕らえられ、独立記念日に間に合ったと安堵します。しかしただのイタチザメで標的でないとフーパーはみなします。そして、フーパーの調査船でブロディら2人は真の標的を探そうとするものの、その中でサメ狩りに熱心であった地元漁師ベン=ガードナーの船を発見します。スキューバダイビングスーツを着たフーパーは船を調査し、ホオジロザメの巨大な歯を発見します。しかし直後に発見したガードナーの死体に驚き、歯は落としてしまいます。

 翌7月4日(独立記念日)。ブロディとフーパーはボーン市長にビーチ閉鎖を求めるものの、証拠の歯を無くしたこともあり信じてもらえず、浜辺には地元民や観光客が集まります。そこにサメが現れ、再び犠牲者が出ます。ブロディはボーン市長にクイントを10000ドルで雇うことを要請し、今度は市長も自分の息子も浜辺にいたことなどから要請を認めます。依頼を受けたクイントは、ブロディとフーパーも同船することを渋々認めつつ、あくまで自分が船長だと横柄な態度を取ります。

 クイントが所有するオルカ号で海に出た3人ですが、3人の関係は険悪です。やがて体長25フィート、重さ3トンはある巨大なサメがあらわれます。クイントはスピアガンを撃ち込むも急所を外し、巨大ザメの方も銛を打ち込まれたまま樽ごと海中に沈み、逃げ切ます。

 夜。3人は船内で酒を飲みながら傷を見せ合い打ち解けます。クイントは自分が第二次世界大戦末期に沈没した軍艦インディアナポリスの生き残りであり、海に投げ出された同僚がサメ達に殺された過去を打ち明けます。そこへ戻ってきていたサメが船体に体当たりを始めます。船底から浸水する中で、エンジンルームに被害が出ます。未だ樽がサメに付いたままであることを確認した3人はそれを目印に銃器で応戦するものの、再びサメは逃げます。

 夜が明けると再びサメがやってきます。ブロディは沿岸警備隊に無線で救助を求めるものの、サメとの勝負に拘るクイントは無線を破壊ます。クイントはサメを浅瀬に誘導する策を取り、サメが船を追うものの、浅瀬に着く前に過負荷で船のエンジンは故障します。

 ダイビングスーツを着たフーパーはサメに耐性のある檻に入って、そこからサメに猛毒のストリキニーネを注射して殺そうとします。しかしサメは檻に体当たりし、フーパーは危機に陥るも檻の格子から脱出し、海底の岩陰に隠れます。一方でブロディ達は檻を引き上げるものの、そこにサメが飛び出してきて沈みゆくオルカ号を攻撃し、甲板から落ちたクイントは食い殺されます。サメはさらにブロディにも襲いかかるものの、ブロディはとっさにスキューバタンクをサメの口に詰め込み逃れます。

 甲板は完全に沈み、海上にわずかに突き出たマストに陣取ったブロディにサメは執拗に攻撃します。クイントのライフルを持ったブロディはサメの口内に銃弾を撃ち、最後の弾丸がボンベに命中して大爆発を起こし、サメはバラバラになります。

 生き残ったブロディのもとにフーパーが海上に浮上し、互いの生存を喜びます。2人は船の残骸と樽を浮き輪代わりに、島へと泳いで戻ります。

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